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Feb 19 2021 14:55

【参加記あり】「グローバル・スタディーズの課題」シリーズ第10回「アフリカに接近する:政治学からのアプローチ」

グローバル地域研究機構(IAGS)GSI

【参加記あり】「グローバル・スタディーズの課題」シリーズ第10回「アフリカに接近する:政治学からのアプローチ」


日時:   2021年2月19日(金)14:55-16:40

場所:   Zoom Webinar

スピーカー:       遠藤 貢
大学院総合文化研究科国際社会科学専攻・教授

 

タイトル:          「アフリカに接近する:政治学からのアプローチ」

 

要旨:駒場には地域文化研究という後期課程・大学院はあるものの、そこにはアフリカ(ここではサハラ以南アフリカ)を扱うコースはこれまで存在してこなかった(それゆえに、駒場での国際関係論というコースに身を置いてきたという経緯もある)。こうした環境の中でアフリカ研究を行うことの意味をどのように考えてきたのか、あるいはどのように研究してきたのかを振り返るとともに、気がつくと、アフリカという地域を政治学(国際政治学、比較政治学)といった学問領域で考えることは、グローバル・スタディーズにつながる営為であり続けてきたのではないかということについてお話しできればと考えている。そして、ここ10年程度は、こうした試行錯誤を通して、多分野のアフリカ研究者や、他地域の研究者との多くの共同研究を実施していることにつながったことなどについても触れられればと思う。

 

司会:  伊達聖伸(総合文化研究科 地域文化研究専攻)

討論者:田辺明生(総合文化研究科 超域文化科学専攻)

國分功一郎(総合文化研究科 超域文化科学専攻)

 

言語:   日本語

 

問い合わせ先:   グローバル・スタディーズ・イニシアティヴ(GSI)事務局(contact@gsi.c.u-tokyo.ac.jp

「グローバル・スタディーズの課題」シリーズ:これまでのセミナーはこちらのページをご覧ください。

 

【参加記】

2021年2月19日(金)にグローバル・スタディーズ・セミナー「グローバル・スタディーズの課題」シリーズは第10回を迎え、遠藤貢氏(東京大学総合文化研究科教授)に「アフリカに接近する:政治学からのアプローチ」と題してご講演頂いた。

遠藤氏は、比較政治、国際政治、アフリカ政治にまたがる研究を手がけてきた。特に破綻国家・紛争というテーマを、アフリカ現地社会や世界史の文脈を踏まえて比較研究を行ってきた。遠藤氏のアフリカ研究の歴史を辿ると、まず大学の学部・専攻を決める際に、「グローバル・イシュー」という、当時としては先端的な研究が可能な教育機関として、駒場への進学を決めたという。入学後には「国際関係論」の授業を受ける中で、食糧問題や環境問題といった問題解決の可能性や実践的な研究の必要性から、地域としての「アフリカ」に目を開かれ、アフリカ地域に対する国際社会の取り組みについて意識するようになったとのこと。

その後の研究においては、まず、「地域としてのアフリカ研究」に着目したと遠藤氏は述べた。英国留学時には、当時民主化をめぐる南アフリカと周辺地域の研究を行う中で、「市民社会」(civil society)の概念を用いた比較分析に関心を持ったという。そして現地調査を行う中で、民主化の研究に市民社会の概念を用いることの有効性、市民社会からみる政治体制の評価の意義に気づき、その後の研究領域の広がりに繋がったと遠藤氏は語った。

また、国際関係論分野において「非国家主体」が政治に影響力を与える研究が登場したことを契機に、さらに比較政治研究の視点を強めていくこととなった。2019年の日本政治学会では、アフリカ地域におけるデモクラシーのバックラッシュ問題について報告し、「新自由主義的権威主義」(Neoliberal Authoritarianism)の台頭について問題提起した。他方で、駒場の「人間の安全保障プログラム」の発足に合わせて、「紛争と和解・共生」科目を担当したことが、新しい研究テーマを扱う次の転機となった。紛争地域に多くの破綻国家や未承認国家が現れ、ソマリア地域をめぐる「崩壊国家」「ディアスポラ」を探求する調査を実施するなど、より広域の「アフリカの角」などに関心が向かっていった。また、ソマリア地域を研究する中で中東研究者との交流が促進され、その後2つの共同研究プロジェクトとなる「グローバル関係学」や「アフリカ潜在力」に携わった。政治学からみるアフリカ研究の立ち位置について、遠藤氏は未だ道半ばであり、今後若手研究者との共同研究などを通じて、「アフリカ」地域を考え続けることが必要であると強調した。

 遠藤氏の報告に対し、アフリカ地域研究からみる政治学や国際関係論の展望、グローバル秩序におけるアフリカ地域の重要性の変化、ルワンダ・エチオピア事例からみる「新自由主義的権威主義」のあり方、アフリカの「自由」の未来などについて質問が寄せられた。また、アフリカ政治・権威主義への宗教的な影響やアパルトヘイト運動の影響、そして広義の意味でのアフリカと狭義のアフリカについての活発な意見交換がなされ、本セミナーは閉会した。

【報告:ハン・アラン(国際社会科学専攻修士課程)】