第3回グローバル・スタディーズ・セミナー 阪本拓人「国際社会はどこまで「人間的」たりうるか?:定量テキスト分析による挑戦」

【日時】2025年10月23日(木)15:00~16:30
【司会】國分功一郎(総合文化研究科超域文化科学専攻)
【コメント】受田宏之(総合文化研究科国際社会科学専攻)・中尾沙季子(総合文化研究科地域文化研究専攻)
【開催場所】18号館4階コラボレーションルーム1+Zoom
【要事前登録】参加を希望される方は、こちらから登録してください。その際、対面を希望される場合はお名前の後に〇印を付けてください(例:東大 花子 〇)。
【言語】日本語
【要旨】今日の国際社会は、近代ヨーロッパで誕生した主権国家体系に起源を持つ。個々の人間よりも国家全体の生存や利益が優先されてきた主権国家体系をより「人間的」なものにしようとする営みは、20世紀に入る前後から顕在化し、第二次大戦後の脱植民地化と人権の国際法規範化、冷戦後の「人間の安全保障」「保護する責任」規範の推進や国際刑事司法の発展など、国際社会のあり方にさまざまな変化をもたらしてきた。だが、多くの場所で人間の尊厳が蹂躙され、大国間の競合の再燃が国際協調を揺さぶり、日本を含む各国で自国第一主義が頭をもたげる今日、こうした営みは大きな岐路に直面している。このセミナーでは、国際社会の「人間化」の歴史と現状を簡単に振り返った上で、こうした変化の動態を言説レベルで定量的に捉える試みを紹介する。具体的には、過去80年の国連安全保障理事会のほぼ全ての公式会合を対象に、各会合の議事録に記録されたさまざまな国家や機関の代表による発言の膨大なテキストを、先端的な自然言語処理の手法を用いて分析する。「権利」よりも「責任」に重点を置く「主権」概念の了解の広がり、個々の人間や脆弱な集団の保護を求める言説の出現と受容といった側面から、国際社会の「人間化」が過去80年の間にどの程度進展し、そして今日どこまで後退しているのかを明らかにする。